日本大腸肛門病学会雑誌
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肛囲膿瘍の細菌培養に関する検討
辻 順行高野 正博藤好 建史高木 幸一河野 通孝藤吉 学橋本 正也藤本 直幸佐々木 俊治前川 忠康吉田 敏毅江藤 公則
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1992 年 45 巻 2 号 p. 188-195

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抄録

1990年1月より1990年12月までの間に当院外来を受診した83例の肛囲膿瘍の膿汁より分離同定された144株の細菌を対象し,細菌学的検討と有効な抗生剤投与法の検討を行いつぎの結果を得た.(1)感染の内訳は,単独感染から4感染まで存在し,2種感染が55.4%と最も多かった,(2)好気,嫌気性菌別では,好気性菌のみの感染症例が40.0%,嫌気性菌のみの感染症例は10.8%,好気,嫌気性菌の混合感染症例は49.2%で混合感染の症例が最も多かった.(3)144株の中では,E.coli 38.4%, Bacteroides sp. 23.6%, Klebsiella sp. 11.8%,嫌気性グラム陽性球菌8.3%の順で多く,この4種の菌で全体の82.1%を占めた.(4)各肛囲膿瘍中の嫌気性菌の占める割合は,IIL:55.6%, IIH:66.7%,III:66.7%, IV:80.0%で,深部肛囲膿瘍ほど嫌気性菌の分離率が高かった.(5)抗生剤の投与法は,上記の4種の細菌で全体の82.1%を占めることより,この4種の菌に全般的に有効な抗生剤を投与すべきで,第2世代セフェム系(CMZ)とテトラサイクリン系(MINO)が最も適当と思われた.

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