1992 年 45 巻 3 号 p. 273-281
大腸カルチノイドの開腹症例14例について,臨床病理学的に分析を加えた.大腸カルチノイドの診断は色調,形態,硬さ,生検などによって行われるが,粘膜下腫瘍様の形態を取るため深達度診断が難しく,大きさや場所によって治療方針が決定されるのが現状である.右側結腸に発生したものは,症状が出現しにくく癌同様発見が遅れるため,開腹手術となるケースが多い.ところが直腸カルチノイドは近年内視鏡の発達によって,1cm未満の症例に対してはポリペクトミーによって治療が完了するといわれている.1cm以上になると,局所切除あるいは開腹手術を行わなければならない.2cm以上では開腹の絶対適応であることは多くの文献で述べられているが,1cm以上,2cm未満でしかも深達度sm以上の症例では,リンパ節転移陽性の可能性があり,慎重に取り扱う必要がある.