1992 年 45 巻 6 号 p. 851-854
大腸癌症例56例を対象とし,腫瘍組織の免疫組織学的染色を行って,Ki-67標識率(LI)を算出し,予後との関連を検討した.腫瘍組織のKi-67標識率は15.7~63.6%,平均38,2%であった.正常大腸粘膜のKi-67標識率のmean+2SDである42%をcut off値として,高LI群21例と低LI群35例にわけ,臨床病期,術後再発率,術後累積生存率を比較した.両群の間で,大腸癌取り扱い規約による臨床病期には有意な差を認めず,治療切除例の術後再発率にも有意な差を認めなかった.術後累積生存率は,全症例についてみても,治療切除例のみを抽出して比較しても両群間に有意な差を認めなかった.本研究の結果から,大腸癌組織のKi-67標識率は大腸癌の進行度,予後と有意な相関を認めず,予後規定因子としての意味は少ないことが示された。