1993 年 46 巻 6 号 p. 778-782
炎症性線維性ポリープ(inflammaorty fibroid polyp)は消化管に発生し,胃と小腸にみられるが,大腸の報告は稀であり,直腸の発生例は本邦に報告はない.今回われわれは,直腸に発生した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は28歳の男性で,排便回数の増加や,残便感,便柱の狭小化を主訴に当院受診し,注腸造影検査で直腸後壁に隆起性病変を認め,精査のため入院した.入院時直腸指診で肛門縁より口側6cmの直腸後壁に境界明瞭,表面平滑で,可動性良好な弾性硬の腫瘤を認めた,経肛門的超音波検査では,腫瘤は粘膜下層に存在し,一部固有筋層にまで及んでいたが,良,悪性および組織学的診断を得るため,内視鏡的ポリペクトミーを施行した.組織像より,炎症性線維性ポリープと診断した.炎症性線維性ポ一リプは本邦では現在までに胃が174例,小腸60例と報告されているが,大腸は自験例を含めて12例と少なく,直腸の報告は自験例のみである.