1993 年 46 巻 6 号 p. 793-796
潰瘍性大腸炎に対し大腸全摘,回腸肛門吻合術を施行し,術後2年3カ月目に分娩した1例を経験した.症例は35歳の女性で,1984年粘血便,腹痛,発熱を主訴に発症し,全大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断された.サラゾピリンの治療が行われたが,再燃と寛解を繰り返し,体重は46kgから36kgに減少した.1990年7月当科に入院し,一期的大腸全摘,J型回腸嚢肛門吻合術を受けた.術後1カ月で退院し復職した.1992年に妊娠し,1992年10月5日帝王切開術で女児を分娩した.母子共に異常なく,健康な生活を送っている,本症例は潰瘍性大腸炎で大腸全摘,回腸肛門吻合術を受け分娩が可能であった本邦第1例で,若干の文献的考察を加え報告した.