1993 年 46 巻 7 号 p. 891-894
分娩時の会陰切開創に発生し,肛門括約筋に及んだ異所性子宮内膜症に対し,腫瘍切除と肛門括約筋形成術を施行した1例を報告する.症例は36歳の女性で,24歳時に2児を出産した,その2年後,会陰部のしこりに気が付き,28歳頃より月経中と月経後に会陰部の膨隆と痛みを認め,6カ月前より硬結の増大を生じた.会陰切開創の一部に,径1.5cm大の腫瘤があり,生検にて,会陰部子宮内膜症と診断され,6カ月間ホルモン療法施行後手術を行った.外肛門括約筋の一部を含む腫瘤切除と括約筋形成術を行い,組織学的に括約筋に及んだ異所性子宮内膜症と診断された.会陰部子宮内膜症が肛門括約筋に及ぶ症例は,非常に稀であるが,肛門括約筋の合併切除を伴う腫瘤切除が必要であり,一期的に肛門形成術を行う術式が可能であると考えられた.本邦報告例26例も集計し,同時に報告する.