日本大腸肛門病学会雑誌
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大腸癌の病理組織診断
中村 恭一熊谷 二朗大倉 康男岡安 勲
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1993 年 46 巻 8 号 p. 996-1006

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抄録

大腸の小さな腺腫と癌は内視鏡的に切除してしまえば完全に治癒してしまうから,その術前の組織診断が良性であれ悪性であれ,所詮それはどうでもよいとする考え方もある.しかし,大腸の腺腫と癌の組織診断基準は,大腸癌の組織発生を導くための前提である,さらには,その癌組織発生は腺腫―癌関係にまつわる臨床病理学的諸:事象を理解する上での前提である,このように,大腸の腺腫―癌の組織診断基準,組織発生そして臨床病理学的諸事象という3つの事柄は互に強く関連・しているのであって,それらはいわば大腸癌の構造を形造っている16,177.大腸の腺腫と癌に関する諸々のことが体系化された構造(癌組織診断基準←→癌組織発生←→臨床病理学的諸事象)には,それら3つのごとの問に矛盾があってはならず,整合性が要請されるのである.このことを無視して,腺腫と癌の組織診断基準を論じ,記述することはできない.現在,一般的に受容されている大腸癌の組織診断基準はというと,それはMorsonによる癌の定義そしてdysplasia分類,あるいはそれに準じたものである.それらを前提とした上に築かれる構造は矛盾を多く含むようになる.ここに至って,構造に整合性を与えるためにはその前提である大腸癌の組織診断基準の見直しが要請されるのである.

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