1995 年 48 巻 9 号 p. 1001-1008
教室で1981年から1992年までに経験した大腸癌切除症例651例にみられた大腸多発癌は49例(7.5%)であった.同時性大腸多発癌は41例,異時性大腸多発癌は8例であった.同時性大腸多発癌の特徴として第1癌と第2癌が同一区域または隣接区域に存在することが多く,単発癌と比較し第2癌の壁深達度がm, sm層に多く,肉眼型も0型が多い傾向がみられた.またploidy patternにおいて第1癌ではdiploidyの頻度が高く,腺腫の合併,大腸癌の家族内発生が高頻度にみられたが,予後は良好であった.一方,異時性大腸多発癌では単発癌と比較して発症年齢で有意の差はないものの第1癌でやや若年,第2癌でやや高齢発症の傾向がみられた.また占居部位では右半結腸に好発し,第1癌と第2癌は離れた区域にあることが多く,予後は単発癌と比較し不良であった.これらから大腸癌の術前術後の検査において多発癌の存在を考慮した診察の必要があると思われた。