1995 年 48 巻 9 号 p. 992-1000
大腸癌肝転移切除例52例を対象として,切除成績について検討した.肝切除後の1年生存率は77.9%,3年生存率は51.0%,5年生存率は39.7%であった.肝切除後の予後に影響を与える因子としては,原発巣の所見では転移陽性リンパ節数で,2つ以下の症例と3つ以上の症例では,2つ以下の症例の予後が良好であった.肝転移巣の所見では,同時性の肝転移が異時性より予後不良の傾向を認めたが,転移個数,H因子の程度別では差を認めなかった。肝切除方法を小範囲切除,広範囲切除,複数肝切除の3方法に分けて検討したが,3者間の予後に有意差はなかった.術後に動注化学療法を行った症例と行わなかった症例の生存率の検討では,施行症例の予後が有意に良かった.最近の動注化学療法の成績を考慮すると,同時性肝転移の治療にあたっては,原発巣の切除とともにできる範囲での肝切除術を行い,術後早期から動注化学療法を行うことが良好な結果をもたらすのではないかと思われた.