1996 年 49 巻 10 号 p. 1159-1168
一般に肛門およびその周辺疾患のなかで痔瘻の手術が最も破壊的である. 裂肛に対する内括約筋側方切開術後のminor incontinenceが論じられる現在, 低位筋間痔瘻に対しても機能温存術が望まれる. この際, 術後の残存組織が深部痔瘻に比べて少ないことが, 原因の除去や再建修復に対して一層工夫を要する点となる. 本稿では原発口, 原発巣部の炎症や硬結が強く, 索状で比較的長い低位筋間痔瘻を適応として, 1984年筆者らが考案し, 翌年から本格的に行ってきた「切開・くり抜き術」, すなわち瘻管の内外を直視下で, 的確に原発口から原発巣にいたる導管を切開, 残りの瘻管を原発巣を含めてくり抜き, その後再建する法, につきその思考, 手術の実際, 改良点, 11年間に行われた279例の成績, 〈再発3例 (1.1%), 治癒遷延45例 (16.1%) 改良により最近の3年間では約7%に減少, アンケートによる術後の訴えは16例 (7.4%)〉につき述べる.