日本大腸肛門病学会雑誌
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大腸癌肝転移最近の動向
藤田 伸杉原 健一森谷 宜皓赤須 孝之
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1996 年 49 巻 10 号 p. 1256-1265

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抄録

目的 : 1984年から1991年までの大腸癌肝転移切除症例の臨床病理学的背景因子と予後との関連, 切除後再発様式と多数回肝切除成績および動注補助化学療法の成績を検討する. 対象 : 国立がんセンター中央病院で治癒的に肝切除された134例を対象とした. 結果 : 単変量解析では, 原発巣のリンパ節転移程度が少ない方が多いものに比べ (P<0.0001), 肝転移時期では異時性の方が同時性に比べ (p=0.049), 肝転移程度ではH1, H2の方がH3に比べ (p=0.018), 肝切離面組織学的癌露出の有無では, 露出のない方があるものに比べ (P=0.004) それぞれ生存率は有意に良好であった. しかし, Coxの比例ハザードモデルでは, 原発巣のリンパ節転移程度に有意差が認められるのみであった. (p=0.0002).肝治癒切除後再発は96例 (72%) に認められ, 残肝再発が70例 (54%) と最も多かった.多数回肝切除例は30例あり10例の5年以上生存例があった.動注補助化学療法の有用性は認められなかった. 結論 : 肝転移切除後の予後のさらなる改善のためには, 肝転移の予防, 危険因子の同定と新たな治療法の確立が必要である.

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