1996 年 49 巻 4 号 p. 318-322
症例は72歳, 男性.下痢下血で発症, 大腸内視鏡検査にて全大腸炎型潰瘍性大腸炎を疑われた.保存的治療が開始されたが, 腹部X線撮影にて横行結腸の著明な拡張が出現, 中毒性巨大結腸症の診断で当科緊急入院となった.強力静注療法を行ったが全身状態は改善せず, 大腸亜全摘兼直腸粘液瘻・回腸瘻造設術を行った.結腸は著明に拡張菲薄化し, 術中横行結腸の一部で穿孔が生じた.術後, 集中治療の甲斐なく, 上部消化管大量出血, ARDS等を合併し死亡した.潰瘍性大腸炎は, 高齢者においても発症頻度の僅かなピークを形成しており, 高齢化社会である現在, 注意すべき疾患の一つである.高齢者の潰瘍性大腸炎に中毒性巨大結腸症を合併した場合には若年者における場合と比べてもきわめて救命率が低く, より迅速な診断と的確な治療が要求される.