日本大腸肛門病学会雑誌
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家族内集積を示した多発性表面型腫瘍の1例
田口 夕美子大野 博之白鳥 泰正金田 繁樹宮沢 秀明小林 智子木幡 義彰片山 麻子宮岡 正明斉藤 利彦
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1997 年 50 巻 3 号 p. 177-182

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抄録

症例は63歳,男性.大動脈弁閉鎖不全兼狭窄症にて弁置換術施行後,便潜血反応陽性を指摘され,大腸内視鏡を施行した.以来6年間の経過観察中に5個の早期癌,39個の腺腫が認められた.早期癌はすべてIIa型で,癌および腺腫の22.7%(10/44)は表面型腫瘍であり,これらの多くは右側大腸に分布していた.本症例は母親が73歳,妹は58歳で大腸癌で死亡しておりHNPCCの診断基準に合致し,さらにLynchらのflat adenoma syndromeの可能性も考えられた.1992年に肝弯曲部のII a型早期癌に対し,右半結腸切除術が施行された.深達度sm1の腺腫を伴う高分化型腺癌で,同病変の遺伝子学的検索ではK-ras codon 12の点突然変異は陰性,p53変異陽性,microsatellite instability陰性であった.家族内に大腸癌集積を示す表面型腫瘍多発症例においてもp53の異常が関与する可能性が考えられたが,マイクロサテライト領域の遺伝子不安定性についてはさらに症例数を増やしての検討が必要と考えられた.

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