1997 年 50 巻 3 号 p. 191-195
症例は61歳男性で,便潜血陽性で注腸検査をしたところ,S状結腸に8mm大の隆起性病変を認めた.大腸内視鏡検査では,同部位に周囲の軽度隆起の上に乳首様のIs型ポリープを認め,生検結果は腺腫であった.内視鏡的切除を勧めるも拒否し,経過観察とした.32カ月後に注腸検査にて19mmまで発育し,大腸内視鏡ではすでに小型の2型大腸癌まで発育していた.開腹切除術を施行し,切除標本は高分化腺癌,ss,NPGタイプの発育形態であった.この大腸癌の発育進展を考えるに,発見されたIs型ポリープはすでにsm癌であり粘膜下層に癌が存在していたと推測され,これがNPG型の発育をして,32カ月の間に初期の腺腫成分が脱落して,小型type2となったと推測される.大腸腫瘍の自然史については注腸による遡及的検討などのさまざまな議論が行われているが,自験例は,内視鏡的にIs型ポリープからtype2の進行癌への発育を観察し得た貴重な症例といえる.