1997 年 50 巻 5 号 p. 360-364
術後6年の無再発生存を得た若年者結腸癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は15歳,男性.左側腹部痛,嘔吐を主訴に来院.イレウスのたあ緊急手術施行.開腹所見で下行結腸癌と診断し,左側結腸切除(D3)を施行した.病理組織学的には中分化型腺癌,s,n(-),ly1,v0,ow(-),aw(-),ew(-),H0,P0, stage IIであった.初回手術より2年後イレウスにて開腹したが癌の再発を認めなかった.その後経過良好で初回手術より6年を経た現在再発徴候なく健在である.本邦で報告された15歳以下の小児結腸癌60例の予後は不良で,5年以上生存した症例は8例のみであった,その理由としては低分化度の癌腫や高度進行例が多かったためと考えられた.治療成績の向上には小児といえど持続する原因不明の腹痛や消化管出血を認めたなら癌の存在をも念頭においた診療態度が必要である.