日本大腸肛門病学会雑誌
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直腸Gastrointestinal Stromal Tumor (GIST) の1例
横井 公良山下 精彦田中 宣威石川 紀行瀬谷 知子大秋 美治管 隼人恩田 昌彦
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キーワード: 消化管問葉系腫瘍
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1999 年 52 巻 5 号 p. 424-430

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抄録

直腸Gastrointestinal stromal tumor (GIST) の1例を報告する.症例は67歳.女性, 残便感を主訴に当院を受診す.注腸, 大腸内視鏡, CT, MRIおよび吸引細胞診で, RbRaの約7cm大の平滑筋肉腫と診断しMiles手術を施行した.病理組織学的にはHE染色でspindle cellがほとんどを占め, 核は紡錘形でmitosisも認めたため平滑筋肉腫を強く疑ったが, 免疫組織化学的検索を行ったところ, Vimentin陽性, SMAおよびDesmin陰性, S-100蛋白およびNSEも一部を除き陰性, またCD34およびc-kitともに強陽性であることから筋原性, 神経原性のいずれの方向にも分化していない未熟な間葉系細胞が主体を占めており, GISTと診断した.過去11年に消化管の筋原性, 神経原1生腫瘍は941例あり, 直腸は71例報告されている.その71例中免疫組織化学的検索がなされているのはわずかに9例であり, その9例の中にも現在の概念に一致しない診断をされている症例がみられることから, 消化管の粘膜下腫瘍の中にGISTが少なからず含まれていると思われる.GISTの診断には免疫組織化学的検索が必須であることと, 臨床医, 病理医の啓蒙が必要と思われた.

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