53 巻 (2000) 4 号 p. 227-230
症例は56歳の男性.主訴は肛門部痛.肛囲膿瘍の疑いで,切開術を行うも黄色ゼリー状の粘液のみであった.粘液の病理組織検査では悪性細胞を認めなかったが,再切開時に嚢胞壁からの組織で粘液癌と診断可能であった.CEAは10.1ng/mlと上昇.肛門管粘膜には異常を認めず.触診では病変部位は不明瞭であったが,骨盤MRIで肛門周囲,会陰部,海綿体の脂肪織内へ嚢胞状に広がった腫瘤を明瞭にとられることができた.以上より肛門腺由来粘液癌と考えられた.手術は広範囲肛囲皮下脂肪織切除を含む仙骨腹式直腸切断術,海綿体部分切除術,薄筋皮弁形成術を施行.摘出標本では,粘液を多量に貯留した多房性嚢胞とその壁に進展した高分化型腺癌を認めた.診断に関して,痔関連疾患を示すことがあり,本疾患を念頭におく必要があると思われた.また骨盤MRI検査が正確な浸潤範囲と術式決定に有用であった.