2001 年 54 巻 10 号 p. 896-900
痔核の脱出は,anal cushionsと呼ばれる肛門粘膜,肛門上皮と粘膜下層および粘膜下層の線維性血管組織が,肛門外へ弛緩して滑脱することと考えられる.Longoにより確立されたcircular staplerによる下部直腸粘膜環状切除術(PPH)は,痔核組織への血流を減らし,弛緩したanal cushionsを吊り上げて,解剖学的位置へ復元することにある.手技上歯状線より肛門側に創部がないことから,術後疼痛が小さく早期に社会復帰し得る.術後経過の上では,出血,狭窄などの臨床症状が著明な例は少なく,1年後の患者満足度も高い.しかしながら直腸膣瘻や骨盤内膿瘍などの重篤な手術合併症も起こり得るため,適応を選び十分習熟した術者が行う必要がある.