2001 年 54 巻 10 号 p. 915-920
従来の痔核手術は痔核を被う肛門粘膜や肛門上皮を切開し痔核組織を切除する方法が主流である.閉鎖法,半閉鎖法などの術式があるが出血や疼痛を軽減するには限度がある.当院では肛門上皮や肛門粘膜をふれずに外部より痔核組織みのを選択的に切除する手術法を考案した.鋼刃のメス,電気メス,レーザーメスでは不可能であったものが新しい器械の開発により可能となった手術法である.この手術は,肛門管に近い皮膚面の3カ所より刺入した超音波駆動のHarmonic scalpelフック型メスで行う.このメスの持つ瞬時に切開,止血,凝固が出来る特徴を生かし,皮下,粘膜下を通り直接に痔核組織に達し,選択的に手術をする.この手術法の長所は,出血しやすい肛門粘膜や知覚の過敏な肛門上皮を触れぬため,出血もなく,痛みも非常に少ない.しかも痔核根部結紮も不要で手術時間も短い.また,術後瘢痕もほとんど残らぬため術後愁訴も少ない新しい手術法の一つと思われる.