2001 年 54 巻 10 号 p. 926-931
虚血性大腸病変として,虚血性大腸炎と静脈硬化性大腸炎を概説した.また合わせて,当教室にて長期経過を追えている静脈硬化性大腸炎症例を報告した.虚血性大腸炎では,突然発症する臨床症状から当該疾患を疑い,速やかに大腸内視鏡検査で診断を進めることが最も重要と思われる.また治療においては,重症化の可能性を常に考慮し,外科との密接な連携が必要である.一方,静脈硬化性大腸炎は,病変部腸管の静脈に石灰化を来たす慢性虚血性の稀な疾患であり,いまだ日本人19例が報告されているにすぎない.しかも,初期には盲腸,上行結腸に留まる石灰化が,しだいに経過とともに肛門側に進展する特徴を持つ.そこで10年以上経過を追えた症例で,実際の病変の変化を提示した.