抄録
症例は65歳男性.直腸癌(P-Rb)の診断で腹仙骨腹式直腸切断術,D3リンパ節郭清,骨盤内臓神経両側部分温存術を施行した.術後に会陰皮下膿瘍を合併し,培養でMSSAとEnterococcus faecatisが検出されたが抗生剤投与と洗浄で軽快,術後31日目に退院した.術後72日目から発熱と大腿部痛が出現し再入院となった.入院時には左腰部の叩打痛と左腸腰筋肢位を認めた.腹部CTにて左腸腰筋から骨盤内に連続する膿瘍陰影があったため,抗生剤投与を開始すると共に,超音波ガイド下にドレナージチューブを挿入した.膿汁培養でMRSAが検出されたため抗生剤をTeicoplaninへ変更し,チューブ洗浄を続けることにより腸腰筋膿瘍は軽快した.膿瘍発生機序は,腹膜外経路で閉鎖腔に留置した開放式ドレーンの逆行性感染により閉鎖腔から腸腰筋前面に感染したものと考えられた.予防には閉鎖式ドレーンの使用が,治療には超音波ガイド下のドレナージが有用と思われた.