2004 年 57 巻 2 号 p. 76-80
消化器症状をともなわない10~20歳台の痔瘻症例の中で,痔瘻治療経過よりクローン病(以下CD)を疑い,精査にて本症と診断した4例の肛門病変初発型CDを報告する.症例の年齢は,13歳から28歳(10歳台3例,20歳台1例)であった.4症例とも初回痔瘻治療時肛門病変にCDを疑う所見を認めず,消化器症状なども認めなかった.また痔瘻はいずれもIIL型で,瘻管切除標本の病理検索で肉芽腫を認めたことや,術後の再発,遷延治癒が本症の診断の契機となった.10歳台の痔瘻では7例中3例がCDにともなう病変であり,若年者肛門疾患の治療に際しては,CDを念頭に置くことが重要である.