2004 年 57 巻 3 号 p. 141-144
肛門類基底細胞癌は稀な疾患で,本邦報告例も自験例を含め40例と少ない.今回,類基底細胞癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は76歳の女性で,肛門痛を主訴に近医肛門科を受診し,内視鏡下腫瘤生検で類基底細胞癌と診断され手術目的に紹介となった.肛門管は著しく狭窄し,示指の通過は不可能であった.注腸造影検査でも肛門管は狭窄し,粘膜面の不整像を認めたが直腸の拡張は良好であった.骨盤部CTでは腫瘍の肛門括約筋への浸潤も認めた,手術所見はHO,po,Nl,Ai(腟)で,腟部分切除をともなう腹会陰式直腸切断術を施行した.切除標本では,肛門管に約6cm×5cmの2型腫瘍を認め,病理組織学的に類基底細胞癌と診断された.術後経過は良好で現在外来にて経過観察中である.