2004 年 57 巻 6 号 p. 324-328
邦文要旨:最近の2年間に当院を肛門症状を主訴として来院した症例484例で,主訴や検査内容,診断名,治療などを調査検討した.痔疾患と診断されたものは462症例で,内痔核が85.3%を占めていた.根治手術は89例(19.3%)で行われ,約8割の症例では保存的治療が行われた.大腸ポリープは63例(13.0%)で,55例は痔疾患を,2例は痔疾患と癌を合併しており,63例中29例(46,0%)が内視鏡的処置を受けていた.大腸癌は11例(2.3%)で発見され,主訴では出血と便通異常が多かった.性別では男性5例,女性6例で,部位では直腸7例(63.7%),S状結腸4例(36.3%)であり,下行結腸より口側にはなかった.根治手術ができたのは7例(63.6%)であった.以上から,肛門症状を主訴とした症例では,主訴から症例を絞り込み,S状結腸内視鏡検査を行うことが,癌の見落としを予防するために重要と考えられた.