Zairyo-to-Kankyo
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速報論文
石油タンク底水を用いた腐食再現試験と微生物群集構造の変動
若井 暁藤井 創太郎政成 美沙安部 晶大三本木 至宏
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2013 年 62 巻 10 号 p. 389-392

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抄録

微生物が関与する金属の腐食現象を微生物腐食と呼ぶ.これまでの微生物腐食の診断法は,腐食試料の微生物群集構造を調べるだけであり,微生物と腐食を対応付ける情報が不十分であった.本研究では,腐食の進行と微生物群集構造の変動の関係を明らかにするために,石油タンク底水を用いて腐食再現試験を行い,腐食鉄量および微生物群集構造を調べた.日本の九州の同一施設に設置されている3基の石油タンクから底水を採取し,その微生物群集構造を比較した.底水中の微生物群集構造は,タンクによって異なっていた.これらの底水を用いて実験室レベルで腐食再現試験を行った結果,一つのサンプルで微生物腐食が顕著に進行することが分かった.このサンプルの腐食前後の微生物群集構造を解析した結果,群集構造を変動させる二つの要因を明らかにできた.一つは腐食の進行で,もう一つは無機塩の添加である.腐食の進行は,微生物群集構造の変動と連動していた.一方,無機塩の添加は,腐食の発生に関係なく微生物群集構造を変えることが分かった.以上の結果から,微生物腐食の診断技術を確立するためには,微生物群集構造と並行して水質の変化も経時的にモニタリングすることが有効であると我々は提案する.

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© 2013 公益社団法人 腐食防食学会
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