2015 年 64 巻 11 号 p. 497-500
耐局部腐食性に優れる二相ステンレス鋼の開発には,局部腐食の起点となる介在物の制御が重要である.本研究では,Ta添加による介在物改質がスーパー二相ステンレス鋼のすきま腐食に及ぼす影響について調査した.その結果,Ta添加により耐すきま腐食性は向上することが明らかになった.Taを含有しないベース鋼に見られたMnSはすきま腐食試験後に溶出しており,これがすきま腐食の起点になっていることが示唆された.一方,Ta添加鋼では,すきま腐食起点となるMnSの一部がTaを含む酸硫化物(Ta‐Mn‐S‐O)に改質されており,これはMnSの溶解が見られた試験溶液への浸漬後でも変化が見られないことから,電気化学的に安定であることが明らかになった.Ta添加による耐すきま腐食性向上メカニズムは,MnSの一部がTaを含む酸硫化物に改質され,すきま腐食の起点が減少したことに起因すると推察された.