2016 年 65 巻 12 号 p. 498-504
ステンレス鋼の耐すきま腐食性を評価する電気化学的方法の一つとして,JIS G 0592法に準拠した往復分極法がしばしば用いられている.同法におけるすきま腐食進展挙動についてはこれまで必ずしも明確にされているとは言いがたく,例えば,各分極操作(段階I~段階IV)時におけるすきま腐食進展挙動やJIS G 0592の電位操作で決定される臨界電位(E'R,CREV)より卑な電位での進展挙動など,これまで不明な点が多く残されていた.なお,試験後のすきま腐食深さが40μm以上の場合,E'R,CREVはER,CREVとなり再不動態化電位と呼ばれる.
本研究では,同法と連動した石英ガラス/金属すきまを有するSUS304およびSUS316Lステンレス鋼のすきま内In-situマクロ観察を実施した.その結果,(1)往復分極法においてすきま腐食の発生は動電位操作の段階Ⅰと定電流操作の段階Ⅱの前期でおこり,すきま口における腐食部分の深さ方向への進展は主として段階Ⅱの終点まで続く.(2)すきま腐食は段階Ⅲの動電位逆掃引と定電位ステップ操作の段階Ⅳにおいても面積的に進展する.さらに,すきま腐食はStage IVで決定されるE'R,CREV以下の電位でも面積的に進展することが確認できた.この面積的な進展が停止する電位以下の電位では,すきま腐食進展は実質上停止する.