Zairyo-to-Kankyo
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論文
すきま腐食進展過程に対するすきま内電位/電流密度分布の数値解析的考察
松岡 和巳松橋 亮野瀬 清美梶村 治彦
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2016 年 65 巻 8 号 p. 350-357

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抄録

E=399mVにおけるSUS304の人工海水中におけるすきま腐食進展過程について、有限要素法を用いた8節点アイソパラメトリック要素によるすきま内外の電位・電流密度分布の数値解析をおこなった.その結果に基づき,腐食先端部のすきまの縁下への到達前後におけるすきま腐食進展メカニズムについて考察をおこなった.得られた結果を以下に示す.

1)腐食先端部がすきま縁へ到達する前には,定電位保持下でもすきま内においてはすきま縁から腐食部分の先端位置近くまで,IRドロップによる一定の電位卑化が観られた.

2)腐食先端位置では電位卑化が急激に大きくなる一方,電流密度は急激に立ち上がる.

3)腐食部分の電流密度は,腐食先端から腐食起点に向かうにつれて低下する.

4)腐食先端部の電流密度は,すきまの中心側より縁下側のほうが圧倒的に大きい.このため,腐食先端位置の縁下側への移動が加速する.このことから,縁下側腐食先端部では金属イオン溶出によるpH低下が顕著になっているものと考えられた.

5)腐食先端位置が縁下まで達すると電位上昇により電流密度は更に増大し,多量の金属イオンが溶出するのと考えられる.しかし,溶出した金属イオンのすきま外への拡散も容易になるとともにすきま外からの試験溶液の流入により,腐食先端部の移動は停止するものと考えられた.

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© 2016 公益社団法人 腐食防食学会
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