ステンレス鋼表面の析出物が孔食の起点となりうることは従来からよく知られている.本研究では,フェライト系ステンレス鋼の初期発銹および孔食発生におよぼす数十nmの粒径を有するε−Cuの影響について検討した.18%Cr−3%Cuフェライト系ステンレス鋼を用いて,ε−Cuの粒径を500~700℃,1~100hの時効処理により制御し,その粒径が結晶粒内で0~51nm,結晶粒界で104~125nmとした供試材を得た.これらの供試材表面のε−Cuは,孔食電位測定において孔食電位よりも低い電位で溶解した.このε−Cuの溶解によって形成された穴が孔食電位において孔食の起点となったことが示唆された.孔食電位測定における孔食密度はサイクル腐食試験における発銹点数と類似の傾向があった.結晶粒内のε−Cuの粒径が35nm以上となる試験片の孔食密度は,35nm以下の粒径の試験片の孔食密度よりも大きかった.このことから,孔食発生に寄与しうるε−Cuの臨界粒径が存在することが示唆された.