本研究は,小学校で受けてきた学習指導要領の理科により,科学の暫定性の理解に違いがあるか否かを明らかにすることを目的とした。このため,科学の暫定性の考え方を導入した平成10年告示の小学校学習指導要領理科が完全実施される以前の2000年と,同学習指導要領完全実施後の2009年とにおける,小学校高学年児童の科学の暫定性の理解を測定できる質問紙法調査を実施した。調査問題は科学の創造性,発展性,テスト可能性,簡潔性の4尺度から構成した。その結果,学習指導要領完全実施前後で簡潔性に関して両者に違いがなかった。これに対して,科学の創造性,科学の発展性,テスト可能性に関する理解に違いが生じた。特に科学の創造性に関しては,平成10年告示の学習指導要領完全実施後の児童では適切な理解をしているという違いが見られた。