2021 年 44 巻 1 号 p. 51-64
本研究の目的は,保育者養成の授業を受講する学生が,協働で音楽を創造する課題をどのように捉え,取り組み,創造性を発揮するのか,その過程に関する理論的枠組みを明らかにすることである。そのために,Schafer の提唱したサウンド・エデュケーションの考え方に基づいて,紙を用いた音楽づくりの授業を実施し,学生の省察レポートをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した。その結果,①学生が聴覚だけでなく触覚や視覚等の諸感覚を働かせ,多様な音を知覚し,そこから様々なイメージを想起して音楽づくりのアイデアを発想すること,②アイデアの発想には試奏時の視線を合わせることや動作の模倣及び同期による協働性の生起が関連すること,③この状況で比喩表現を用いてイメージを言語化することで,音に対する感じ方を他者と共有できるようになり,それを基にアイデアを発展させることが示唆された。