2023 年 46 巻 1 号 p. 13-26
本研究の目的は,保護者の体育科に対する認識に注目をし,その形成プロセスについて明らかにすることである。そこで,学習指導要領で示されている体育科の目標と比べて,認識に相違がある小学校第5・6学年の子供をもつ保護者10名を対象として半構造化インタビューを実施した。得られたデータは修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析をした。
その結果,保護者の体育科に対する認識は,「学生時代の経験」が土台となり,十数年から数十年後に,「保護者としての体育科の見方」というプロセスを経て形成された。特に,学生時代に相対的な技能への称賛を受けてきた経験が,保護者の体育科に対する技能重視の認識を強化する要因であることが明らかになった。その認識を再形成するためには,学校が保護者に子供の体育科の学習状況を適切に伝えることに加え,保護者と子供間で体育科に関する社会的相互作用を生み出すことの重要性が示唆された。