抄録
学校音楽教育において,「音楽の美しさを味わって聴く」ということが慣用句になっている鑑賞領域の教授・学習活動は,多くの場合,教える側は"聞かせた",そして学ぶ側は"聞いた"というだけのことですまされている。しかしそれだけのことでは学校教育における真の意味の鑑賞教育とは言えない。教師は聞かせた音楽に基づいた鑑賞の学習が成立したかどうかということを何らかの方略に基づいて知る必要がある。この点に関しては,前号でも述べたように,まず第一に,学習者たちがこの音楽は"聞ける"ということを教師が知ることである。それによって,この音楽は"聞かされる",また"聞かさねば"ということが判断できるものである。本論は,学習者たちが"聞ける"ということを判断する基準の妥当性を,小・中・高の児童・生徒,および音楽専攻の大学生らを対象として再確認した実験的研究の結果を述べたものである。