日本サンゴ礁学会誌
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原著論文
連結式サンゴ幼生着床具は最良のCoral babe magnetではない:すぐれたサンゴ幼生の着生基盤についての考察
大森 信
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2016 年 18 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

いろいろなさんご礁修復再生事業や港湾開発に伴うサンゴ移設事業でサンゴ幼生の着生基盤として採用され,大量に用いられている連結式サンゴ幼生着床具CSD(Okamoto et al. 2008)はそれほど効果のある人造基盤ではない。CSDをほかの3種の基盤(ホタテガイ貝殻,素焼き褐色陶板,自然分解樹脂ネット)と比較した結果,幼生の着生数密度は何れの場所でも素焼き褐色陶板がもっとも高かった。6ヶ月後の稚サンゴの生残率はCSDがほかの基盤より勝った。今日では明らかなことであるが,幼生の多くは基盤の表面に生じたサンゴモ(無節石灰藻)やバクテリアフィルムからの特定の化学シグナルの刺激によって着生・変態するのであって,基盤の素材は結果を左右する要因にはならない。着生・変態の過程は,1)着生シグナル受容→2)着生行動→3)着生→4)変態,の4段階からなる。基盤の評価は,1)着生・変態,2.育成,3.植え込み,4.その後,の4段階を総合してなされるべきである。幼生の着生率や着生後の生残率は基盤の構造や形状の物理的特性にも影響される。平板な基盤の場合は,サンゴは縁辺部に付きやすく,水平面より鉛直面での生存率が高い。また,稚サンゴがウニや魚類の食害から逃れやすい構造であるものが望ましい。最良の人造基盤は,サンゴ幼生の着生・変態への誘引効果をもつばかりではなく,着生後の生残率が高く,さらに,植え込み作業や運搬が容易で,波浪に強く,はがれにくいものである。

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© 2016 日本サンゴ礁学会
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