日本作物学会紀事
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栽培
寒地における水稲糯品種を用いた乾田直播栽培
湯川 智行大下 泰生粟崎 弘利渡辺 治郎
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2003 年 72 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

北海道で移植栽培されている水稲糯品種を用いて直播栽培を行うために, 発芽や出芽特性, また1998年から2001年の4年間に実際に乾田直播栽培を行い, 苗立ちや収量等について調査した. 発芽や出芽について人工気象下で調査したところ, 糯2品種 (はくちょうもち, 風の子もち) の低温下での発芽および出芽速度は, 直播で栽培されている品種 (ゆきまる, 以下, 直播品種) よりも速かった. 圃場条件下で播種深度を変えて糯2品種と直播品種の苗立ち率を調査したところ, 播種深度が浅い場合には苗立ち率はほぼ同等か直播品種の方がやや高くなり, 播種深度が深い場合には, 糯2品種の方が高くなる傾向があった. 乾田直播の栽培体系に則り, 「はくちょうもち」を用いて機械播種した場合の苗立ち率は32%から56%, 苗立ち数はm2あたり159本から234本となり, 酸素発生剤が無粉衣ではこれよりやや低くなる傾向があった. 乾田直播と移植の生育について比較すると, 適期に播種や移植が行われた場合, 出穂期は2から6日, 成熟期は0から2日程度直播で遅くなった. 収量は, 適播の場合は移植に比べ86%から115%であり, 晩播は適播に比べて高温年の1999年以外大きく減収した. 苗立ち数は穂数に関係し, 直播では移植に比較して穂数が多くなった. 直播では穂数が多くなると収量が増加した. また, 苗立ち数と収量との間にも相関が認められた. 多収を得るためには苗立ち数を確保することが重要であるが, 苗立ち数を多く得ても気象条件によっては移植より減収する場合があった. 糯品種の移植栽培地域への乾田直播の導入には, 出穂期, 成熟期の遅れを考慮する必要がある.

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© 2003 日本作物学会
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