日本作物学会紀事
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総説
中国山東省半島部におけるラッカセイ栽培
—その発展とわが国の需給との関係—
前田 和美
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2003 年 72 巻 3 号 p. 265-274

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抄録

世界的な農産物貿易自由化の趨勢の中で, わが国のラッカセイは関税などの行政的保護をうけて約40%の自給率を保っている. しかし, 2002年度には, 千葉, 茨城両県だけで80%以上を占める総作付面積は約1万haと, 最も多かった1965年前後の1/6にまで減少し, 数万tの国内消費量に対して原料供給量はわずか2万tに過ぎない. また, この40年間, 全国平均単収は莢つきで250kg/10aを超えることができないが, その背景には, 戦後育成されている多収品種への転換や産地拡大に積極的でないなど需給行政の問題もある. 他方, 中国は, 栽培面積の拡大だけでなく単収向上の成果が著しく, ついにこの10年の間にインドを抜いて世界最大のラッカセイの生産·輸出国になり, わが国の食用大粒種の原料, 加工品の輸入量でもほぼ100%を占めるようになったが, 中国産の輸入原料価格は国内産の数分の一である. このように, わが国のラッカセイの需給とは密接な関係があるにもかかわらず, 中国で最大の, そして日本向けの主な産地である山東省の半島部地域のラッカセイ栽培についてはよく知られていない. その発展の歴史, 伝統的栽培技術, 現地調査による栽培の現状などについて紹介する.

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© 2003 日本作物学会
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