日本作物学会紀事
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湛水直播したイネ品種における異なる苗立ち型の発生率とその生育形質
周 紅劉 改雲江原 宏森田 脩
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2003 年 72 巻 3 号 p. 321-327

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抄録

日本型20品種, インド型13品種を用い, 水田で表面播種, コンテナで土壌表面·土中播種して, 3葉期に異なる苗立ち型 (土中型 : 土中から出芽, 接地型 : 種籾が土壌表面に露出するものの稈基部は地面にしっかり固定, 浮上りI型 : 露出根は短くて稈基部は比較的しっかり固定, 浮上りII型 : 露出根が長くて個体が横転) の発生率と生育形質を調査し, 生態型や品種による違いを検討した. 水田とコンテナの表面播種での苗立ち型の発生率は, 日本型, インド型品種とも接地型20∼60%, 浮上りI型10∼35%, 浮上りII型25∼55%であり, 品種によって変異が大きかった. 水田とコンテナの表面播種における浮上り型 (I+II) の発生率の間には有意な正の相関関係がみられた. コンテナ土中播種では, 各品種とも土中型が56∼93%と高く, 浮上りI型はほとんどの品種で10%以下であり, 浮上りII型も20%以下であった. コンテナでの表面播種の浮上り型発生率と土中播種の浮上り型発生率との間には正の関係が窺われた. コンテナ表面播種での浮上り型発生率は, 全根長, 地下部乾物重との間に有意な負の相関関係が, また草丈/全根長比, 地上部/地下部比との間に有意な正の相関関係が認められ, 地下部が発達するか地上部に対して地下部の成長が旺盛な場合には浮上り型の発生が少なかった. さらに, 浮上り型発生率と種子根長/全根長との間には正の相関関係が認められ, 全根長に占める種子根長の割合が低い場合に浮上り型が発生し難いことが判明し, 種子根の出現に続く不定根の伸長が苗立ちに重要な役割を果たすことが明らかとなった.

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© 2003 日本作物学会
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