日本作物学会紀事
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品種 · 遺伝資源
水上栽培における物質生産および水質浄化作用の植物種間差
廣瀬 拓也宮崎 彰橋本 清実山本 由徳吉田 徹志宋 祥甫
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2003 年 72 巻 4 号 p. 424-430

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抄録

イネ科植物 (9種) およびカヤツリグサ科シュロガヤツリを用い, 水上栽培において優れた物質生産および水質浄化作用を示す植物種の養分吸収特性を明らかにし, 自然水域での水上栽培における適種の選抜指標を得ようとした. 結果は以下の通りである. 1) 根の基部に緩効性肥料を施した場合, 乾物生産量はいずれの種においても増加したが, チッソ (N) およびリン (P) の浄化量 (植物による吸収と肥料からの溶出の収支) については増加する種と減少する種があった. このことは施肥条件下でNおよびPの吸収量に顕著な種間差が存在したことによるものであり, 施肥反応性の高い種を選抜することが重要であった. 2) NおよびPの吸収に及ぼす水中のpHおよび栄養塩濃度の影響をイネとシュロガヤツリで比較したところ, イネのNおよびP吸収量は高pH下で低下したが, シュロガヤツリのNおよびP吸収量はpHの影響を受けず栄養塩濃度に伴い増加した. このようにpHの影響は種間で明瞭に異なった. 藻類の増殖によって極度にpHが上昇した水域では, 高pH耐性種を選択する必要性が示された.

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© 2003 日本作物学会
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