日本作物学会紀事
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収量予測 · 情報処理 · 環境
温暖地におけるコムギ主茎の葉, 小穂および小花の分化数成立過程のモデル解析
豊田 正範楠谷 彰人浅沼 興一郎
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2003 年 72 巻 4 号 p. 450-460

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抄録

温暖地におけるコムギの一穂粒数の成立過程を定量的に評価するため, 圃場で栽培したチクゴイズミの主茎の葉, 小穂および小花の分化数を走査型電子顕微鏡で調査し, それらの分化数の推移に有効積算温度を基準としたモデル式を適用した. なお, 小穂や小花の数に影響を与えると考えられる窒素の追肥処理を行ったが, いずれの調査項目にも処理間差は認められなかった. 葉と小穂の分化数の推移に線形スプラインモデルを適用した結果, 分化速度は0.0181 [葉 (°C d)-1] と0.0995 [小穂 (°C d)-1], 分化期間は葉と小穂の順に374°C dおよび149°C dと推定された. 一穂あたり分化小花数の推移には, 小花が直線的に増加する分化初期に直線回帰式を適用したのを除き, Gompertzの生長モデルを適用した. 小花の分化開始期は494°C d, 分化数の最大値は116個で, その時期は821°C dであった. 小穂別の小花の分化数と有効積算温度との関係には直線回帰式を適用し, これを基に小穂別の小花分化開始期, 小花分化速度, および最終生存小花分化期など, 小穂あたり粒数の成立に関係する諸形質を推定した. 収穫期の小穂あたり粒数は穂の中央部が多く, 穂の基部側と先端側に向けて次第に減少したが, その分布に最も密接に関係していたのは小花分化開始期であり, 小花分化開始期が早いほど小穂あたり粒数が多かった. また, 穂の基部から先端に向けて, 小花分化速度は次第に遅く, また最終生存小花分化期は次第に遅れる傾向を示したが, 小穂位置によるこれらの変異や小穂あたり粒数との関係について考察した.

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© 2003 日本作物学会
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