日本作物学会紀事
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栽培
水稲品種の押し倒し抵抗値に及ぼす伸長角度別の冠根の切断処理の影響
坂田 勲鍵谷 俊樹河合 靖司小柳 敦史
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2004 年 73 巻 1 号 p. 1-5

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抄録

水稲の湛水直播栽培において重要な形質である耐ころび型倒伏性については, 根系分布との関連が指摘されている. しかし, 具体的にどの角度に伸長する冠根が水稲の地上部の支持に寄与しているのかは明らかにされていない. そこでまず, 耐ころび型倒伏性と密接な関係にある押し倒し抵抗値が中程度の水稲品種M401を栽培し, バスケット法により出穂後10日における冠根の伸長角度別の本数を測定した. 次に冠根の伸長角度別の切断処理が押し倒し抵抗値に及ぼす影響を検討した. すなわち, 長さの異なる2種類の薄い鉄製円筒により, 出穂後10日に水平から下向き0~36°および0~54°に伸長する冠根を切断して押し倒し抵抗値を測定した. また, あらかじめ設置しておいた深根切断板により54~90°に伸長する冠根を切断し, 押し倒し抵抗値を測定した. その結果, M401では水平から下向き36~54°に伸長する冠根が最も多く, 次いで18~36°に多いことがわかった. 一方, 押し倒し抵抗値は54~90°の断根処理ではほとんど変化しなかったが, 0~36°の断根処理で明らかに低下し, 0~54°の断根処理によりさらに低下した. そこで, 耐ころび型倒伏性が弱から強にわたる6品種について0~36°および0~54°に伸長する冠根を切断して押し倒し抵抗値を比較した. その結果, 各品種とも0~54°の角度に伸長する冠根の切断によって押し倒し抵抗値は明らかに低下した. 一方, 0~36°の角度に伸長する冠根の切断処理では, 耐ころび型倒伏性が弱い品種では押し倒し抵抗値が顕著に低下したのに対し, 耐ころび型倒伏性が強い品種では押し倒し抵抗値はほとんど低下しなかった. 以上より, 耐ころび型倒伏性が強い品種では, 水平から下向き36~54°に伸長する冠根が地上部の支持に重要な役割を担っていることが明らかになった.

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