秋播性コムギ「イワイノダイチ」の早播き栽培に適した施肥法を明らかにすることを目的として, 後期重点施肥がイワイノダイチの生育・収量に及ぼす影響を4カ年にわたって調査した. 後期重点施肥によって, 開花期の全乾物重はやや減少したが, 葉や茎の形態的形質, 開花期のLAI, シンクサイズはほとんど変化しなかった. 子実重は, 後期重点施肥によって4カ年の中の2カ年で増加した. これらの年次においては, 後期重点施肥は, 前期重点施肥や標準施肥と比較して, 1穂小花数は同程度であったが, 1穂粒数が多く, また登熟期間のSAPD値が高く推移した. 後期重点施肥の効果を品種間で比較すると, 4カ年の中の3カ年で, イワイノダイチはチクゴイズミよりシンクサイズが大きく, これに伴い子実重も大きかった. これは, イワイノダイチは潜在的シンクサイズが大きいため, 施肥時期が遅くても, 十分なシンクサイズを確保できたためと推察された. 以上の結果から, コムギの早播き栽培において子実重を高めるためには, シンクサイズが大きく, かつ登熟期間のSPAD値が高く推移することが必要であり, これらの条件を満たすためには, イワイノダイチにおいては後期重点施肥が有望であることが示唆された.