日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
水稲の湛水土中直播栽培における土中出芽性に優れた系統の選抜・育成
太田 久稔笹原 英樹小牧 有三上原 泰樹安東 郁男井辺 時雄吉田 智彦
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2004 年 73 巻 4 号 p. 450-456

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抄録

水稲の湛水土中直播栽培において重要な特性である土中出芽性に関し,テープシーダで深度2 cmに播種する圃場検定,催芽種子を用い,20℃,25℃,播種深度2,3 cmの条件での室内検定により,土中出芽性に優れた系統の選抜を試みた.土中出芽性に優れた遺伝子源として,赤米 (赤米No.4,GB整理番号00010718と思われる),Arroz da Terra, Dunghan Shali, Ta Hung Kuを用い,耐倒伏性に優れた良質,良食味品種であるキヌヒカリ,どんとこいとの交配後代を育成し,上記の土中出芽検定による選抜・育成を行った.赤米,Ta Hung Kuの交配後代では,初期世代から土中出芽検定による選抜を行い,土中出芽性に優れた系統として,赤米では収6357,Ta Hung Kuでは,収6570 (北陸PL3),和系375,和系376を選抜できた.一方,Arroz da Terra, Dunghan Shaliの交配後代では,葉いもち病が多発するなどの問題が多く,土中出芽性に優れた系統を選抜できなかった.そのため,初期世代から土中出芽性の検定を行い土中出芽性に優れた系統を確実に選抜したり,雑種集団の規模を大きくし土中出芽性に優れる個体数・系統数を多くするなどの対処が必要と思われた.本試験で選抜した系統は,いずれも収量性と玄米品質に問題があり,今後,優れた土中出芽性を持つ実用品種の育成においては,品質と収量性を改良することが主な課題になると考えられた.

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© 2004 日本作物学会
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