圃場条件下において, 播種前の代かきおよび播種後の落水程度が打込み点播機を利用した湛水直播水稲の出芽と苗立ちに及ぼす影響を調査した. パディハローを用いた代かきを2行程行った場合(2倍代)は, 1行程の場合(標準代)に比べて播種, 落水後の土壌含水率は高く, 酸素拡散速度は低く推移した. また, 同じ代かき区内においても土壌の均平は不完全でムラがあるため, 落水の良否によって土壌含水率および酸素拡散速度は変化し, 落水が良好な(播種後翌日には落水した)箇所は, 落水が不良な(播種後数日にわたり表面水が停滞した)箇所に比べて土壌含水率は低く, 酸素拡散速度は高く推移した. 2倍代は標準代の落水良好箇所に比べて水稲の苗立ち数は少なく, 標準代の落水不良箇所は, それよりさらに苗立ち数が少なく, 出芽した個体の生育も悪かった. これらの結果から, 打込み点播機による湛水播種・落水栽培法では, 過度に代かきを行わないことと圃場の均平に留意して水の停滞箇所を作らないことが, 安定した出芽・苗立ちに必要であると考えられた.