日本作物学会紀事
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栽培
水稲における追肥後の窒素吸収の経時変化
境垣内 岳雄森田 茂紀阿部 淳山口 武視
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キーワード: 出液, 水稲, 窒素吸収, 追肥
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2005 年 74 巻 3 号 p. 285-290

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抄録

ポットおよび水田で栽培した水稲品種コシヒカリを用いて, 追肥窒素が水稲に吸収される様相を把握するため, 追肥後における茎基部からの出液速度と出液の窒素濃度から出液中の窒素量を推定し, その経時的な推移について検討した. ポット, 圃場試験ともに, 出液の窒素濃度は硫安追肥後6時間目以降に上昇が認められ, 24時間目に最大となった後は漸減した. 出液の窒素濃度の上昇までに6時間以上が経過しているが, これは追肥が土壌中で拡散して根に吸収されて木部導管に入るまでに要する時間と考えられた. 圃場試験の追肥後168時間目では, 追肥区の出液の窒素濃度が追肥を施用しない対照区と同じレベルまで低下しており, 追肥の吸収は終了したと考えられた. なお, 出液の窒素分析の結果から, 圃場試験の追肥後168時間目での追肥硫安の利用率を推定すると約55%であった. 一方, 出液速度は, ポット, 圃場試験ともに, 出液の窒素濃度の上昇から12時間以上が経過した後に, 追肥区で対照区よりも高くなった. この時間的なズレが生じた原因は, 導管液中の窒素化合物の増加が直接的に根の吸水を促進したというよりは, 追肥による根の生理機能の向上により, 間接的に根の能動的吸水が促進されたためと考えられた. 葉色の反応はさらに遅れて, 追肥後48時間目に初めて追肥区が対照区よりも高くなった. 以上のように, 出液の窒素分析から, 追肥が吸収される様相を詳細かつ迅速に把握できることが明らかとなり, さらに追肥窒素の利用率や土壌中での挙動についても把握できる可能性が示された.

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© 2005 日本作物学会
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