2006 年 75 巻 1 号 p. 68-72
本試験では, 北海道育成のコムギ品種ハルユタカを西日本暖地で栽培した場合に粒重が低下する要因を, 九州育成の品種ダイチノミノリとの雑種第1代(F1)粒の粒重を調査することで解析した. F1粒は, 2000/2001年, 2001/2002年および2002/2003年の3シーズンにわたりハルユタカとダイチノミノリとを相反交雑して得たものであり, ハルユタカ, ダイチノミノリそれぞれの穂に着生したものである. F1粒の粒重は, 平均と分散について両品種の自殖粒のものと比較した. ハルユタカに着生したF1粒の粒重は, 3シーズンともその平均値, 分散ともにその母親であるハルユタカに着生した自殖粒の粒重とほぼ一致した. 一方, ダイチノミノリに着生したF1粒の粒重は, 2000/2001年では平均値, 分散ともにその父親であるハルユタカに着生した自殖粒の粒重よりもわずかに小さかったものの, 2001/2002年と2002/2003年では平均値がハルユタカに着生した自殖粒よりも大きく, その母親であるダイチノミノリに着生した自殖粒よりも小さかった. これらのことから, ダイチノミノリのソース能はふつうハルユタカよりも高いものの, シーズンによってはその程度が異なることが伺われた. さらに, ハルユタカは粒そのものに起因する粒重低下を発現する優性遺伝子を有すると考えられた.