水稲の育成地における材料の遺伝的多様性を把握し, 優良形質の集積を図る品種育成戦略を構築することを目的として, 中央農業総合研究センター北陸研究センター(旧北陸農業試験場)で過去80年以上にわたって育成された水稲品種系統(配付済みの北陸系統115系統と未配付系統28系統)について家系分析を行った. 総祖先数は, 20年前から増加し始め, 最近10年で2倍に増加し, 未配付系統の平均は1122に達していること, 祖先品種との寄与率からみて遺伝資源の幅が狭いことが明らかになった. 供試系統とコシヒカリとの近縁係数は1960年代に増加した後は頭打ちになっており, 2004年に奨決に供試した北陸系統16系統では, コシヒカリとの近縁係数は平均で0.463であった. また, コシヒカリとの近縁係数と食味との相関係数は有意ではなかった. 供試した全143系統はキヌヒカリと血縁関係があり, さらに現在育成中の系統(44系統)の86%がキヌヒカリの後代であることから, 育成当初から改良を積み重ね, 現在もコシヒカリの改良後代であるキヌヒカリの寄与が大きいことが示唆された.