日本作物学会紀事
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栽培
中国産多収性水稲品種揚稲4号の出液速度と窒素吸収量に及ぼす肥料の種類と施肥量の影響
居 静山本 由徳宮崎 彰吉田 徹志王余 龍
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2006 年 75 巻 3 号 p. 249-256

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抄録

中国で育成された大穂の多収性インド型品種揚稲4号の減数分裂期(減分期)及び穂揃期の切り株断面からの出液速度と幼穂形成前期(出穂期前23~27日前, 幼形前期)から出穂期にかけての窒素吸収量に及ぼす肥料の種類[一般肥料(塩安, 過リン酸石灰, 塩加, CF)と緩効性肥料入り複合肥料(くみあい被覆尿素入り複合肥料, LP複合444E-80, SRF)と施肥量[窒素, リン酸, カリが成分量で0(無施肥, Non-F), 6(L), 12(M), 18g(H)m-2の4段階]の影響について, 出穂期がほぼ等しい日本稲品種ヒノヒカリを対照品種として検討した. 幼形前期と出穂期の有効茎(青葉数が4枚以上をもつ茎)数は, 施肥量の増加とともに多くなり, Non-F区に対する増加割合は, 揚稲4号に比べてヒノヒカリで, またCF区に比べてSRF区で大きかった. 同一施肥条件下の有効茎数は, 揚稲4号に比べてヒノヒカリで1.6~2.3倍多かったが, 1茎重は揚稲4号で1.9~2.5倍の値を示した. 減分期と穂揃期の株当たり出液速度は, Non-F区ではヒノヒカリが, 施肥区では穂揃期のL-SRF区を除いて, いずれも揚稲4号が優った. 両品種の株当たりの出液速度は, 施肥量の増加に伴って増大したが, 同一施肥条件下では肥料の種類による有意差は認められず, Non-F区に対する増加割合は揚稲4号で大きかった. 両時期の株当たり出液速度の平均値は, ヒノヒカリでは幼形前期と出穂期の株当たり有効茎数の平均値とのみ有意な正の相関関係を示したが, 揚稲4号では, 有効茎数と茎当たり出液速度の平均値の両者と有意な正の相関関係を示し, 相関の程度は後者の方が高かった. また, 両時期の株当たり, あるいは有効茎当たりの出液速度の平均値は幼形前期から出穂期にかけての窒素吸収量と密接に関連した. これらより, 揚稲4号では, ヒノヒカリに比べて茎当たりの出液速度が株当たりの茎数差を上回り, 株当たりの出液速度が優ったために, 窒素吸収量も高くなったものと推定された

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