日本作物学会紀事
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栽培
寒地水稲に対する時期別追肥窒素の利用率と各器官への分配
後藤 英次野村 美智子稲津 脩
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2006 年 75 巻 4 号 p. 443-450

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抄録

寒冷地の北海道は冷害対策の観点からも様々な窒素追肥・分施技術が確立されてきたが, これら技術の追肥時期と白米タンパク質含有量の関係については十分な検討がなされていない. そこで, 寒地水田(上川農試圃場, 褐色低地土)において重窒素標識硫安および普通硫安肥料を用いた水稲の追肥窒素に関わる試験を行い, 水稲への利用率, 稲体各器官への分配および白米タンパク質含有量に及ぼす影響を検討した. 幼穂形成期~幼穂形成期後7日目の追肥は白米への利用率が小さいため, 白米タンパク質含有量に与える影響は小さい反面, 追肥による増収効果が認められた. 止葉期(減数分裂期)の窒素追肥は追肥窒素の利用率および白米への利用率が高く, さらに吸収された窒素の穂部への分配も高いことから, 白米タンパク質含有量を高めることが認められた. これらの傾向は, 基肥窒素量の多少に関わりなく, ほぼ同様に認められた. 出穂期以降の窒素追肥は, 出穂期~出穂期後10日目の間で追肥窒素の利用率および白米タンパク質含有量が最も高くなり, それ以降は漸減した. 追肥窒素の穂部への分配も出穂期をピークにそれ以降で低下し, 追肥が遅くなると稈・葉鞘への分配が高まった. このことから, 低タンパク質米生産のためには窒素追肥を幼穂形成期後7日目までに行い, それ以降は実施すべきではないと判断した.

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© 2006 日本作物学会
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