日本作物学会紀事
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栽培
寒地水稲における施肥法別の窒素利用率と各器官への分配率が白米タンパク質含有量に及ぼす影響
後藤 英次野村 美智子稲津 脩
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2006 年 75 巻 4 号 p. 451-458

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抄録

近年, 北海道米の食味は良食味品種の育成と肥培管理技術の開発などにより大きく向上してきたが, 依然として白米タンパク質含有量の低減と変動幅の縮小が求められている. 白米タンパク質含有量の変動は水稲の窒素吸収の影響が大きく, 水稲の窒素吸収量は施肥量と施肥法に関係していることから, 重窒素標識硫安を用いた水稲の窒素施肥法に関わる試験を行い, 水稲への利用率, 稲体各器官における分配及び白米タンパク質含有量に及ぼす影響について検討した. 全層施肥の窒素利用率は32.4~41.2%であり, 窒素施肥量の増加とともに利用率や白米タンパク質含有量が高まった. また, 全量全層施肥窒素8 g m-2区において吸収された施肥窒素の分配率は茎葉部36.5%, 穂部63.5%であり, 白米には45.4%が集積した. 全層+表層施肥は白米タンパク質含有量を低下させるが, 全量全層施肥および全層+側条施肥よりも窒素利用率が低く, 収量性が劣っていた. 側条施肥の窒素利用率は全量全層施肥より高いが, その吸収は止葉期以前に集中しており, 穂および白米への分配率が全量全層施肥と比較して低いことから, 白米タンパク質含有量は低かった. 全量全層施肥された窒素の次年度以降の利用率は, 2年目が2.9~4.0%, 3年目が1.3~1.8%, 3カ年を合計した窒素利用率は41.9~48.6%であった. また, 施肥後3年目でも, 施肥された窒素のうち20%近くが土壌に残存していた. したがって, 低タンパク質米生産には, 施肥窒素量の適正化を図るとともに生育初期の窒素吸収を促進させる側条施肥を組み合わせることが合理的と判断できる.

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© 2006 日本作物学会
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