1980年代以降にポーランドで育成された秋播性ライコムギは, 北海道中央部において適応し, 多収を示す. その多収要因を明らかにするため, 起生期における窒素追肥量が子実収量に及ぼす影響を調査し, 窒素施肥効率(起生期の窒素追肥量(FN)当りの子実収量(G)の増加量, ΔG/ΔFN)を4ヶ年にわたり, コムギおよびライムギの間で比較検討した. ライコムギの子実収量はすべての窒素追肥処理区においてコムギとライムギに比べて高く, その作物間差異は窒素追肥量にともなって拡大し, ΔG/ΔFNはすべての年次においてライコムギがコムギとライムギに比べて高かった. ライコムギの高いΔG/ΔFNは登熟期間における高い平均葉面積指数(MLAI)に由来した. 登熟期間のMLAIのコムギとの差は乳熟期までの吸収窒素(N)当りの葉身重(ΔLW/ΔN)の大きさに起因した. これに対して同期間のMLAIのライムギとの差は葉身窒素含有量(LN)の差に起因し, それは乳熟期までの吸収窒素当りの葉身窒素濃度(LNC)の上昇量(ΔLNC/ΔN)の大きさによってもたらされた. すなわち, ライコムギの多収性はライムギの具備する吸収窒素の葉面積拡大効率の高さと, コムギの具備する登熟期の葉身への窒素分配量の多さをあわせもつことによりもたらされていると推察した.